Cafe Freedom 開店前の前
 赤煉瓦造りの瀟洒な建物の前に、銀髪の青年はいた。
 昔は何かの店舗だったのだろうその建物は、緑の蔦に覆われている。
 茶色の扉を開け、その奥のもう一つの扉を開けると、カウンターのある広い空間に出た。
「……ここで…ねぇ……」
 薄く埃の積もったカウンターをみつめ、窓から外を眺めて、彼は眼を細める。
「ま、良いか。どうせ暇だしね」


 一年前、不意に姿を消してしまった友人から、最近になって急に頼まれた、「仕事」。


「ハイランド?」
「そう」
「……なんでまた、そんなところに…」
「人手不足らしい。正確には、人材不足? 優秀な戦士が欲しいんだって。優秀かどうかはともかく、実力がお眼鏡に掛かったらしいよ」
 ボンヤリと笑った青年に、彼は溜め息をつく。
「それで? 俺に一緒に来いって?」
「……レインが好きそうな建物があるんだ。前から言ってたお店、開いてみないか?」
「ハイランドで……俺に茶店をやれって?」
「イヤかな? 今、二人だけいるんだけどね。息抜きの出来る場所があると良いな……って。レインの所なら、僕も遊びに行けるし」
「ルー、おまえ、永住する気なのか?」
 訝しげなレインの問いに、ルーティアは肩を竦めただけだった。
「今、戦士募集してるんだ。彼等が来る頃までに、めどが立たないかな?」
 来て貰える、と言う前提で話をしている彼に、レインはがっくりと項垂れる。
「……場所を見て、それからだ」
「有り難う、そう言ってくれると思ったよ」
 まるで邪気のない笑顔に、レインは苦笑するしかなかった。





 店を構えるとなれば、必然。
 まず敢行されたのが大掃除だった。
 取り敢えず、到着した日のうちに居住区はあらかた片付けて、明日から店の掃除だなと、適当に算段を付けていたレインは。明朝、早くからやってきたルーティアと連れの二人に驚きを通り越して呆れてしまった。
「ルー、おまえな……」
「大変かな? と思って。紹介するよ、ウチの人たち。彼がサイファ・コーラル、彼女がウォーデ・グロリア」
「初めまして、ウォーデです。今日は一日お手伝いさせていただきます、宜しくお願いします」
「はあ、どうも」
「サイファ・コーラルっス。水晶宮でも主夫やってるッス、ガンガン使ってやって下さい」
 ガタイに余りにそぐわない「シュフ」という言葉に、瞬間、呆気に取られるレイン。
「……レイン・クラッグフォードだ。一応、ここのマスターって事になるらしい」
 それでも何とか自己紹介すれば。
「ははぁ、マスター・レインッスね」
「なんだ? そりゃ」
「私達のマスターはルーティア様ですから」
「……成る程ね」
 すでに呆れる気力も失せて、レインは彼等を店内へ入れる。
「道具、そんなに無いぞ。持ってきてるんだろ?」
「もちろん。じゃ、始めようか」
「はい」
「ウス」
 そんなわけで4人はそれぞれに、掃除を始めたのだった。
 
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